みなさん、こんにちは。

今回は、私の大好きなイタリア料理のお話をさせていただきます。
「プッタネスカ」というパスタ料理をご存知でしょうか?

最近、日本のイタリアンレストランのメニューで見る機会が増えたように思いますが、「カルボナーラ」や「ペペロンチーノ」のようには、まだまだ馴染みの無い料理名だと思います。
 黒オリーブ、アンチョビ、ケイパー、赤唐辛子を使った辛味が効いた刺激的なトマトソースのパスタで、ナポリの名物料理です。
 パスタ製造業者によると、そのソースがポピュラーになったのは1960年代だとか。

 ここでまず、「プッタネスカ」の日本語訳のお話をしたいと思います。

 パスタ料理のネーミングには、○○風というものが多くあります。
 例えば、

*alla carbonara カルボナーラ : パンッチェタ、卵、パルミジャーノチーズで和えたものに黒胡椒を
      ふりかけるパスタ。炭焼きのことをcarbonaioと言い、alla carbonara は炭焼き風という意味。
      その名の由来は、炭焼き小屋で作ったのが始まりで、黒胡椒を炭に例えたとか。

*alla pescatora ペスカトーラ : pescaは漁のこと。pescatoreは漁師、alla pescatoraは漁師風という
      意味。言うまでもなくその名は魚介類を使った料理に使われます。

*alla boscaiola ボスカイオーラ : boscoとは森のこと。boscaioloは木こり、alla boscaiola は木こり風。
      森で採れるキノコ類を使った料理を指します。

では、alla puttanesca プッタネスカとは?

 puttanaとは娼婦、puttanescaはその形容詞で娼婦の、alla puttanescaは娼婦風という意味。つまり、Spaghetti alla Puttanescaは「娼婦風スパゲティ」と訳せます。興味深いのはその名のいわれ。
 どうして娼婦風などという風変わりな名前がついたのでしょう。不思議に思われませんか。調べてみた
ところ、その由来については以下のような諸説がありますが、どれも定かではないようです。

1. 刺激的な味わいが娼婦を思わせるパスタだから。
2. 美味しいので、娼婦が客引きに使っていた。
3. 手軽なので、忙しい娼婦が家に残している子供に作った。
4. 娼婦は毎日買い物に行けず(外出を制限されていたのか?周りの目が気になったからか?)、残り物や保存食(黒オリーブ、アンチョビ、ケイパー等)でパスタ料理を作った。

 いずれにしても、イタリアでは家庭料理とのことですが、家族団らんには似つかわしくない名前のパスタですね。


 しかし、確かにこのパスタ料理は、ソース材料の黒オリーブ(甘い香り)、アンチョビ(塩辛さ)、ケイパー(軽い酸味)、赤唐辛子(ピリッとした辛さ)と個性の強い素材がそれぞれ主張しながらも調和し、複雑な味わいが楽しめます。
 ちょっと癖になる味だと思います。我が家では年に1〜2回、食いしん坊の友人たちが集まりパーティーを開きます。料理はイタリアンが中心で、今まで色々なパスタ料理もおもてなししましたが、このプッタネスカは新鮮な味だったようで、皆さんにとても好評でした。
 作り方はいたって簡単。レシピも添付しますので、パスタ好きな方、ぜひ一度この謎の多いパスタ料理を作ってみてください。

 つい先日、あるイタリアンレストランで、「焼き鯖のプッタネスカ」というメニューが目に付いたので注文しました。アンチョビの代わりに焼き鯖のほぐし身が入っていました。ソースの中で焼き鯖の味が少し浮いている感じで、プッタネスカの絶妙なバランスが崩れていました。
 やはり、アンチョビのほうが合っていると思います。それにしても、たらこスパゲティに代表されるように、日本人はパスタ料理を和風素材でアレンジするのが得意(?)ですね。

 私は夫の仕事の関係でミラノに住んでいたことがあります。せっかくだからとイタリア人の先生に料理を習いました。初めはイタリア語はさっぱりわからず悪戦苦闘の毎日でしたが、料理は手順を見ていれば理解できますし、食べてみるとすぐに結果が判るので、‘Buono!’だけで十分でした。
 駐在中に習ったたくさんのイタリアンレシピは今も大変重宝しています。

 日本では1990年代前半のバブル崩壊後、高級なフレンチレストランが少なくなって、逆にイタリアンレストランが増え始めたように思います。
 色々なことがブームになってはすぐに消えるという傾向が強いように思いますが、イタリアンブームは収まらず、今やすっかり定着した感があります。それほど日本人の味覚に合ったということでしょうか。
 食材に手を加え過ぎないため飽きないのだと思いますし、イタリア料理ほど簡単でかつ美味しいものはないと私は信じていますが…

                        


 イタリア料理はヨーロッパではフランス料理と双璧をなす代表的な料理ですが、ヨーロッパの料理の母的存在でもあるようです。
 1533年、フィレンツェの名門貴族メディチ家のカトリーヌ嬢がフランスの国王アンリ2世に嫁いだ際、大勢のイタリア人コックを連れて行き、それをきっかけにフランスの宮廷料理やテーブルマナーが洗練されたというのは有名な話のようです。フランス料理は西洋を代表して世界3大料理に数えられますが、実はイタリア料理がその原型だったのです。

 イタリア料理は素材の持ち味を生かし、形式にこだわらず、調理方法もシンプルで手軽に家庭で作れるものも多いところが、その魅力ではないかと思います。その背景には、そもそも家族の絆が強いイタリアでは食事は「我が家」で食べるのが基本という考えが強く、家庭料理を大切にしてきたということがあるのではないでしょうか。

 それに比べてパリで食べるフランス料理は繊細でソースや盛り付けの美しさが命という感じがします。私がイタリア料理を習った先生の内一人は、元イタリア料理学校の先生でした。その盛り付けはとても上品で美しいと定評がありましたが、それでも、フランス料理の比ではありませんでした。

 私見ですが、フランス料理は京料理のイメージ。その昔、現代のようにクール宅急便が無かった頃、海のない京の都では新鮮な魚が捕れないために色々と工夫がなされたのでは…。
 パリも同様に新鮮な食材が手に入りにくい場所だったのだろうと思います。そしてその新鮮さに欠ける点を補うために、複雑なソースが発達したのではないでしょうか。

 しかし、同じフランス料理でも南フランスはどちらかというとイタリア料理に近い地中海料理で、いわゆるフランス料理のイメージはありません。
 一般的に中華・フレンチ・日本食などと国の名前で料理を区別しますが、素材が違えば料理も変わるはずですよね。

 実はイタリア料理にも前述のことが当てはまるようです。「イタリア料理という名の料理は存在しない。あるのは郷土料理だけ。」という言葉があります。
 イタリアの国土は南北に長く、その気候や地理的な違いから産物も違います。例えばイタリアを大きく南北に分けると、温暖な地中海性気候の南部では、オリーブ油、トマト(16世紀スペイン人によって新大陸からナポリにもたらされた)を多用します。
 日本を含む諸外国で一般に「イタリア料理」というイメージの料理が多いのです。(南イタリアから外国への移民が多かったから) パスタは乾麺で、海に面しているため魚介類を多く使います。

 これに対して大陸性気候の北部では、バターや生クリーム(アルプス山麓の酪農による)を使用した
ヨーロッパ大陸的な料理が多く、生の手打ち麺が豊富で、肉類が中心です。米やポレンタ(トウモロコシの粉を練り上げたもの)も食します。
 また、イタリアは1861年に国家統一されてわずか百数十年。それまでは各地方が独特の文化を持った都市国家の集まりだったので、料理も当然その地方によって違ったものだったわけです。そして、地方ごとの個性的な食文化が未だに健在であるということが、イタリア料理の特徴と言えるのでしょう。

 ワインにも同じことが言えます。ミラノ駐在中、大型スーパーの壁一面のワイン棚に並んだ各地方のワイン、その種類の多さに圧倒されたことを思い出します。ワイン好きの夫も私も毎晩違うワインを楽しんでいました。

 現代は食もボーダレスの時代。どこでも同じ料理を食べることができたり、さまざまな料理が融合して新しく美味しい料理が出現するのは楽しい面もありますが、郷土色豊かな伝統料理や愛情いっぱいの「Mamma=お袋」の味も守り続けていきたいものだと思います。  

Spaghetti alla Puttanesca

《材料》
スパゲティ・・・・・・・・200g
にんにく・・・・・・・・・1片
赤唐辛子・・・・・・・・・1本
黒オリーブ・・・・・・・・50g
アンチョビ(フィレ)・・・・4枚
ケイパー(ケッパー)・・・・大さじ2
ホールトマト(缶詰)・・・・400g
イタリアンパセリ・・・・・適宜
オリーブ油・・・・・・・・大さじ2
塩・・・・・・・・・・・・適宜

     


《作り方》
@ にんにくは包丁の腹を当ててたたきつぶす。赤唐辛子は種を取って手でちぎるか小口切りにする。黒オリーブは種を取り除き、粗く刻む。アンチョビは細かく叩く。ケイパーは粗く刻む。イタリアンパセリはざく切りにする。
A オリーブ油を入れてにんにくと赤唐辛子をいれて弱火で炒め、よい香りがしてきたら黒オリーブ、
アンチョビ、ケイパー、ホールトマトを加え、木べらでホールトマトをつぶす。
B にんにくを取り除き、弱火にして、15分程煮る。
C 鍋に2リットルの湯を沸かし、塩20gを入れてスパゲティをゆでる。
D スパゲティがゆで上がったら、湯をよくきり、Bの鍋に加えイタリアンパセリを入れて全体を手早く混ぜ、塩で味を調える。


Buon appetito !












《一口メモ》

*この料理にはあまりきちんとした決まりはなく、ソースの材料の配分量は好みで加減しても大丈夫
です。
*オリーブはグリーンのものより、黒いほうが完熟しているのでまろやかで深みのある味わいがあり
ます。種抜きの黒オリーブが手に入れば、便利です。
*ケイパーは、地中海沿岸の潅木、セイヨウフウチョウボクのつぼみを塩水漬けや酢漬けにしたもの。プッタネスカには塩水漬けのほうがよいと言われますが、酢漬けしか手に入らない場合は、酢を捨て
しばらく薄めの塩水に漬けてから使ってもいいです。









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