ウィメンズ

          NO.16



第5回交流会の報告はこちら



第16 回の寄稿は、佐藤智江さん(学32H)です。



ラテン・アメリカでの暮らし/雑感


  1983年にイスパニア学科を卒業。5年ほど大阪で船会社や貿易商社に勤めた後、一応休職扱いにしてもらって、学生時代には出来なかったスペイン留学(グラナダ大学)を果たしました。1年で元の会社に復帰する予定だったのですが、当時オリンピックブームに沸くバルセロナの日本企業に縁あって就職が決まり、そのまま5年ほどバルセロナで働きました。

 その後、話せば長い色々な経緯があって、南米エクアドルの日本企業で11年、チリで2年、そして今はコロンビアで働いています。その間に予定外の高齢出産をしてしまい、現在8歳になる、ラテンの血が半分入って陽気だけれど、日本人の血も入っているせいかこちらではお行儀が良いといわれる、男児を育てながらの勤務です。

 結局、かれこれ20年以上のラテン生活ですが、その間、デスクワークではなく現場仕事が結構多かったため、本当にたくさんの貴重な体験をさせてもらっています。こちらでは車は必需品。仕事だけでなく、車での旅行が趣味なので、普段は日本人どころかアジア人も見かけないような異国の村や道を走りました。

 今考えると無謀でしたが、出産日の前日まで自分で運転して車通勤もしていたせいか、幸い息子も車には抵抗がなく、赤ちゃんの頃から後部座席に乗せてのドライブ旅行を楽しみました。そんな生活の中から思う事を少しお話させて頂きます。




クリスマス前の野菜、果物

 エクアドルでもチリでもコロンビアでも、クリスマス前になると、スーパーや市場で売られる野菜や果物の質が変わります。
 ジャガイモやニンジンなどは、明らかにサイズが小さくなり、果物はまだ熟していない青いものが増え、早めに収穫したのが一目瞭然。気候のせいなのかなと思っていたのですが、どうもそればかりではなさそうです。
 クリスマスといえば日本ではお正月に当たり、何かとモノ入りです。農民が早目に収穫し、換金しているからに違いありません。

東洋人

 アメリカに行くと、誰もが英語を話せて当たり前といった風潮があり、こちらがおぼつかない英語で尋ねても、立て板に水の米語が容赦なく返ってきますよね。
 中南米の東洋人が少ないところでは、いくら立派なスペイン語で話しても、「???」という反応をされます。東洋人はスペイン語がわからないという先入観があるためでしょうね。
 日本語の達者なガイジンさんが沢山いる昨今はどうかわかりませんが、以前は日本でも、紅毛碧眼の人が近づいてきただけで、「この人の言うことは、私にはわからないわ」と頭から思ってしまうのと同じですね。こちらでは、こっちがスペイン語で話しているのに、片言の英語が返ってくることもしばしばです。

姑

 ラテンだけではなく、他の西洋社会でもそうだと思いますが、嫁と姑の関係って日本ほど悪くないですね。それよりもっと深刻なのが、娘婿と姑の関係です。娘の母は婿が嫌いだし、婿は妻のお母さんを間違いなく疎んじています。本物そっくりのネズミの玩具が“お姑さん用”と標示をつけて売られたりするくらいです(もちろん男性向け)。
 それから、これはラテンだけかもしれませんが、男性のマザコンは決して恥ずかしいものではなく、幾つになってもマミーを大切にしています。私はこちらで子供が生まれた時、男の子で良かったねと、皆に言われました。確かに、母と息子は、結構大きくなっても手をつないで歩いているのをよく見かけますし、マミーの誕生日には最低でも電話の1本も入れないと、大人の男性として大きな罪になります。

時間

 ラテン人が時間にルーズなのか、日本人が時間に几帳面すぎるのか、以前、アメリカ人が「僕たちにとっては“時は金なり”だけど、ラテンじゃ“時間は消費するもの”だよね」と言っていました。

 こちらでは、「すぐやります」という意味で「5分でやります」という表現があるのですが、律儀に5分待ってもそれが果たされないどころか、10分たっても20分たっても出来ずにイライラするのは日本人だけかもしれません。時間は、必ずしも“時計”で測れるものではないことを覚えないと、ストレスがたまる一方でしょう。
 パーティーなどは、9時に招集しても実際に始まるのはまあ11時ごろでしょうか。それに慣れてしまうと、時間通りに先方を訪問するのも考え物です。早く行っても誰もいないし、なんだか自分がガツガツしているようだし、1時間くらい遅れて行くのが、こちらの感覚では「優雅」ですね。
 ビジネスの場では、日本慣れしている客先に会食の時間を告げると「それは日本式の時間か、それともラテン・タイムか」とわざわざ確認されることもあります。日本式だと伝えると、指定時間の30分も前に来られる時もあるので、時間を守る几帳面さの問題ではなく、考え方の違いなんじゃないかと思えるようになりました。


インディオ

 インディオ系の人は言われたことはちゃんとやるけれど、言われたことしかしません。以前の会社で、インディオ系のメッセンジャーに取引先へ封筒を届けるように頼んだことがありました。
「エレベーターを降りて左に曲がってつきあたりの事務所だから」と言ったのですが、彼は直ぐに封筒を手に戻ってきました。
「そういう会社はなかった」と言います。
 よくよく考えたら、私の指示が間違っていて、その取引先はエレベーターを降りて「左」ではなく、「右」だったのです。だけど、多少でも機転が聞く従業員なら、左に行って届け先の会社がなければ、念の為同じフロアにその会社がないか調べるとか、その辺の人に訊くとかすると思うのですが、そういうことは一切してくれません。

 ただ、これは必ずしも機転が利かないからではなく、彼らの知恵なんだと思います。
「ご主人様の指示通りにやって、それで結果が悪かったら、指示を出したご主人様のせい。自分が非難される筋合いは全くない。」という、大昔からの保身術なんじゃないかと。
 インディオ系のタクシー運転手だと、行き先を告げると「どの道を行けばいいか」と訊かれることがよくあります。順路によっては渋滞で到着時間が遅れる可能性があり、どのコースをとるべきか頭をつかって決断する必要があるのですが、客が指示した通りの道順で仮に渋滞にはまったとしても、それは客の責任です。スペインは勿論、チリやコロンビアはそういうインディオ系がいませんから、自分の判断で機転を利かせてくれる率が高いですね。特に、スペイン人などは反対に、こちらの指示など全く無視して自分の独創的なやり方で物事を進めるような気がします。

生物多様性と持続可能な開発

 先ごろ名古屋で“COP10”が開かれ、日本でも「生物多様性」という表現がよく聞かれたと思うのですが、これは「野生動植物の保護」といった概念でとらえられているのではないでしょうか。生態系が豊かな当地では、「生物多様性=有効利用」といった概念の方が強い気がします。多様な生態系の産物を、保護しつつもいかに利用して地元の経済発展につなげるか、といったところに焦点があてられています。
 以前エクアドルで、原生林伐採問題に関するセミナーが同国の林野庁主催でありました。世界で最も蝶の種類が多いとされる地区での違法伐採問題を、フランス語訛りのスペイン語で滔々と述べていた国際環境団体員に対して、「木を切って生計をたてている原住民がいるんだ。一匹の蝶を守る為に、10人の子供が飢えで死んでもいいのか。」と発言した人の言葉が、重かったです。

サルサ

 せっかくラテンにいるのだから、サルサやメレンゲくらい踊れるようになりたいと思い、コロンビア人の友人にサルサの踊り方について教えを乞うたことがあります。その時、彼女が言ったのは
「目をつぶって、音楽を聞いて、貴女の内から湧き出るものに従って体を動かせばいいのよ」でした。

 日本人の私には、そんな教え方にはもちろん満足できず、というか理解出来ず、「サルサのステップ」を覚える為、キューバ人女性がインストラクターをしている、結構有名なダンス教室に通いました。初日に教わったのは、大きな鏡の前で、歩くような感じで音楽に合わせて足を動かすこと。それを1時間あまりも繰り返しました。
 そのうちステップに入るのだと思っていましたが、2日目も同じことの繰り返し。鏡の前で延々と足を動かすだけ。3日目も同じ。それが4日続いて、辞めてしまったのですが、後になって気が付いた事があります。
 これがラテンの生徒だったら、早ければ、初日後半か少なくとも2日目には、自分なりに即興で腕を動かし、足も前に出したり後ろに引いたりしながら、踊っていくようになり、それを先生が矯正しつつ、ステップを教えていくんじゃないかと。

 日本舞踊のお師匠さんなら、延々と足だけ動かす動作を1ヶ月続けるのが修業だということになるのでしょうが、サルサはやっぱり、友人が言っていたように、いかに自分を解放するかがポイントなのかなぁと。うちの息子はラテンの血が入っているせいか、音楽のビートを聞いただけで、誰が教えたわけでもないのに上手に体を動かしています。ただラテンといっても、スペインで少しかじったフラメンコや、アルゼンチンのタンゴなどはサルサよりもステップや型が重視されると思います。



ラテン色々

 ひとくちに中南米といっても、国によって国民性も違うし、同じスペイン語でもアクセントも違います。訛りが強くてすぐ国籍がわかるのは、アルゼンチン人、チリ人、コロンビア人でしょうか。国民性で言えば、アルゼンチン人は傲慢ということで、中南米では結構嫌われ者です。おとなりのウルグアイ人は田舎者だけれど優雅。ベネズエラもアラブ系が多いせいかやはり嫌われています。

 誰もが親近感を持つのがブラジル人で、彼らは人種偏見もなくとてもフレンドリー。チリ人はドイツ系が多いせいか真面目で、所謂ラテン系のノリというのはあまりないですね。ペルー人はコンプレックスを持っていて、エクアドル人はおとなしくて、コロンビア人はハッピーだと、チリの人が言っていました。メキシコには住んだことがないのですが、意外に閉鎖的というか、心の内を決して明かさないような気がします。

クーデター

 エクアドルに住んでいた約11年間の間に、クーデターによる政権交代が、なんと3回もありました。クーデターといっても、民衆が大統領を辞めさせた、といった感じのもので、どれも無血で死者はひとりも出ていません。政権を追われた大統領は皆、大統領府の裏口から大慌てで逃げだして国外逃亡。チリでピノチェトの軍政に倒れたアジェンデ大統領が、モネダ宮を軍に包囲され銃撃を受けながらも、最後まで中に残って死んでいったのと大違いです。

 大学では、ラテンアメリカ文学をシュールレアリズム文学の位置づけで教わった記憶がありますが、日本人にとってはシュールな出来事も、こちらでは日常であってシュールでも何でもないことがしばしばあるのを、暮らしの中で実感できるようになりました。


 他にも色々お話したいなと思う事があります。興味を持たれる方がおられましたら、個別にお話しさせて頂きたいと思います。お気軽にメール下さい。
 メールの宛先は→ こちら (クリックして少しお待ち下さい)


 以下は旅行先でのスナップです。面白そうなものを紹介させていただきます

    

 エクアドルといえばガラパゴス諸島。5年前に訪問しました。    エクアドルの田舎の小学校の子供たち。会社のCSR
 一見岩のように見えるゴチャゴチャしたものは全部イグワナ    活動で絵のインストラクターを派遣しました。最初は
 です。                                    暗い絵でしたが、最後にはこんな明るい絵を描きました。



   

            チリではロデオが盛ん。田舎町をドライブ中に見つけ、チョット覗いてみました。


   

   コロンビアでは街中がクリスマスの照明を飾ります。        ボゴタ近郊の農園風テーマパークでの子豚レース。
   これは公園でのデコレーションです。                  日本では見かけませんが、こちらでは大人気です。








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