関東ウィメンズくらぶ       第11回交流会



「俳句って楽しい! ー 誰にでも作れる俳句」  
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 講師 志賀佳世子さん(学11EA)



  真夏を思わせるような日差しの照り付ける平成29年5月20日、「都会の隠れ家」と呼ぶにふさわしい、文京区本郷の食事処「金魚坂」の一室を借り切り、総勢25名で交流会を開催しました。

 「金魚坂」は名前の通り350年続く金魚屋で、現在も金魚の飼育、販売もされているお店です。部屋の中はレトロで落ち着いた雰囲気でした。まずはランチ親睦会で、山ア規矩子さん(学11EC)の音頭で乾杯し、おばんざい9品を盛り込んだお弁当である「金魚すくい御膳」を美味しくいただきました。

その後、今回お招きした同窓生志賀佳世子さんに「俳句って楽しい!―誰にでも作れる俳句」と題して講演をお願いし、皆さんに俳句作りの指導と添削もしていただきました。


 

 

1.俳句の歴史

 講演ではまず、志賀さんの先生であった藤田湘子に繋がる俳句の歴史をお話しいただきました。俳句は約300年昔に松尾芭蕉が盛んにした。故郷の伊賀上野から江戸に出て俳諧師となる。色々なところを旅し、あちこちに弟子ができ、芭蕉10哲と呼ばれる有名な俳人も輩出した。そして、俳句は日本全国に広がっていった。

 ところが時代の変遷により近代になると、蕉風と呼ばれる松尾芭蕉の古典主義の俳句はすたれてしまった。それを復興させたのが正岡子規である。伊予松山の出身である子規は目の前にあるものを描く写生が大切だと考え、古典の知識などなくても、誰もが詠める俳句を説き、俳句をまた盛り上げた。近代俳句の師と言われている。子規が後継者として選んだのが同じ松山出身の高浜虚子である。

 虚子はすぐれた俳人であるのみならず経営者としての才能もあり、結社「ホトトギス」を作った。(結社とは、一人のリーダーの下、その人に賛同して集まった俳人のグループのこと。)「ホトトギス」には多くの弟子が集まり、全国に優れた俳人を輩出することとなった。

 その中の一人である水原秋桜子は、初めて俳句のわび・さびの壁を破り、俳句の世界に西洋絵画のような明るい色彩や雰囲気を持ち込んだ。後に、虚子から離れ「馬酔木」という結社を作った。 秋桜子の句風に引かれて「馬酔木」に入ったのが志賀さんの先生であった藤田湘子である。湘子もまた、後に秋桜子から独立し「鷹」という結社を作った。


 2. 俳句との出会い

 志賀さんは末の娘さんが大学に入学されたのを機に、それまで手を染めたことのないものをやってみたいと思い、色々な習い事をした中で、俳句を選ばれたそうです。そして、立川のカルチャーセンターで開講していた俳句入門というクラスに入られました。そこで前出の藤田湘子という先生に巡り合われました。

 湘子の俳句への情熱、作品のエネルギーや素晴らしさに惹かれ、どんどん俳句の世界にのめり込んでいかれたそうです。 そして、習い始めて7,8年くらい経った頃に、突然、湘子から川越のNHKカルチャーセンターで講師を探しているので、そこへ行くようにと推薦されました。俳句は習うものと思っていたので、それは晴天の霹靂だったそうです。その後、立川の朝日カルチャーセンターでも教えることとなりました。講師となって以来20数年が経過し、その間には嫌な事、辛い事、厳しい事など多々ありましたが、やはり志賀さんは俳句が好きだからこれまでずっと続けてこられたと話されました。

 現在は月に7回、クラスを持って教えておられます。クラスでは俳句を学ぶ生徒さんのキラキラした目、生徒さんとの色々なやり取りが楽しくて、一人でも多くの方が俳句に興味を持って、俳句ってこんなに楽しいのだと思ってもらえるようにとの思いで、講師を続けていらっしゃいます。 今回も皆さんに俳句の楽しさを伝え、一句作っていただくのが最大の目的だと話され、具体的な俳句の作り方へと講演内容は移っていきました。


 3.俳句の前提

 まずは、次のように3つの俳句の前提を話されました。

@ 俳句は五・七・五の十七音で作る世界で最短のポエムと言われている。色々な事をたった十七音で表すのはとても難しいが素晴らしいこと。字余り、字足らずは避けた方がよい。五・七・五はそれぞれを上五、中七、下五と呼ぶ。

A 一句の中に必ず一季語を入れるのが原則。その働きは、十七音では多くのことを言いきれない俳句に、季語によって、季節感、連想力、安定感がもたらされる。

B 切字「や」「かな」「けり」等を用いる。俳句は散文ではなく韻文。韻文は詩歌の言葉。韻文のはたらきは俳句にリズムをつける、聞いていて心地よい、響きがよいということである。そのために切字が役立つ。このことを例を挙げて説明されました。

   上五        中七      下五
 夕東風や   海の船ゐる 
  隅田川      水原秋桜子
  
(ゆうこちや うみのふねいる すみだがわ)

「夕東風や」の切字「や」のはたらきで、夕暮れに東風がふいていて気持ちがいいなあ、隅田川にはさざ波が立っているだろう、などと情景が思い浮かび、句にリズムが生まれる。

   上五        中七      下五
  夕東風に   海の船ゐる   隅田川
   
ところが「夕東風に」とすると散文のようになり、響きの点で「夕東風や」に劣る。 最近は散文的な俳句も存在するが、初めて俳句を学ぶ時にはこの3つの原則を守って作るべし、とのことでした。

 4.一番やさしい俳句の型―その作り方―

 志賀さんがカルチャーセンターで使っておられる藤田湘子の教本を基に、下記の五つの作り方のポイントを教えてくださいました。
@ 上五に季語を置き、「や」で切る
A 下五を名詞止めにする
B 中七は下五の名詞のことを言う
C 中七・下五はひとつながりのフレーズである
D 中七・下五は上五の季語と全くかかわりない内容である。

 これらについても例句で説明してくださいました。

     上五(季語)   中七       下五
    名月や   男がつくる  手打ちそば     森澄雄


 「名月や」と切字を用いて表現したとき、作者は名月の美しさを讃えるとともに、名月に照らされている山野草木をも讃え、そしてそういう晩に身をおいている今の自分を、しみじみとなつかしんでいるのである。こういったことは作品の表面には何もかかれていないけれど、切字「や」のはたらきによって連想されるわけである。(上記@)

  さて、中七・下五は場面がパッと転じて、「男がつくる手打ちそば」となる。これは都会の家庭を想像してもいいが、やはり都会を離れた農村とか山村に泊まって、男の作った手打ちそばを作者がご馳走になるところ、というふうに設定したほうがたのしい。手打ちそばとなるとかなりの労力を要するから、宿の主人みずからそばを打っているのだろう。作者は「月見そばというのもまた一興」と思いながら、その作業をみつめているのである。わずか十七音の俳句でもこれだけの連想を広げられるわけだ。

 さらによく見ると、上五の「名月や」と中七・下五の「男がつくる手打ちそば」とは内容が異なっている。中七以下では「名月」のことはいっさい言っていない。せんじつめて言うと、「名月」と「手打ちそば」の配合ということになる。(上記D) もう一つ大事なことがある。それは、「中七の言葉は下五の名詞のことを言っている」という点である。つまり、男がつくる→手打ちそば、となっていて、上五のことを言っているのでもなければ、中七だけ勝手に上五・下五にかかわりないことを言っているのでもない(上記B、C)。


 5.いよいよ実践

 次は実践に移ります。志賀さんの指示は、まずこのレストラン「金魚坂」の中で五音の名詞(下五)を見つけるということでした。例えば、掛け時計、レストラン、ティーポット…等々。アドバイスとしては、気取らず見たものを書く、その名詞をどのように表せばよいか考える(中七)、映像が浮かぶように表現する、というものでした。

 そして最後に、志賀さんが用意してくださった句集のプリントから季語(上五)を選ぶという手順で進めるということで、志賀さんが下記のお手本の句を作ってくださいました。

     上五(季語)    中七      下五
     葉桜や
    天井高き   レストラン

  皆さんは、まるで講義を受ける学生に戻ったかのような気分で、集中して俳句作りに取り組んでおられました。そして、次々と俳句は完成していきました。さすが、言語を学んできた外大生ですね。 志賀さんは時間の許す限り、完成した俳句をホワイトボードに書き出し、時折ユーモアを交えながら、とても解りやすく解説、添削をしてくださいました。

 素人目にはよくできた俳句だと思えるものも、志賀さんの添削にはどなたも「なるほど…」と感心しきりでした。交流会後に、交流会では添削しきれなかった句を含め、全員の句を添削し、一人ひとりに郵送してくださるという丁寧さに恐縮しています。

 皆さんの作られた句と添削後の句をご紹介したいところですが、紙面の都合上、割愛させていただきます。 講演会の最後に志賀さんが仰ったことがとても印象的でした。それは、志賀さんが俳句を続けてきて良かったことは、「人生に退屈する時間がないこと」、そして良くないことは、「英語をすっかり忘れたこと」というものでした。そして、それを詠まれた一句が、

     夏痩せて 英語ときどき 役に立つ

 講演終了後、感謝の気持ちを込めた花束贈呈を喜んでくださり、その場で一句詠んでくださいました。
 
    花束に 顔かくれたる 薄暑かな

  この講演では他言語にはない日本語の美しさや奥深さを再認識し、心が豊かになったように感じました。そして、俳句って楽しい!もっと作ってみたい!と実感しました。 交流会後の参加者へのアンケートによると、とても楽しかった、俳句作りが面白かった、学びがありよかった、志賀さんが素敵だった、等々、皆さんがこの交流会を楽しんでくださったことが分かります。それは偏に志賀さんのお陰だと深く感謝致します。

 交流会後に志賀さんが詠まれた俳句を二つ、ここにご紹介させていただきます。

   同窓の 若きにまじる ビールかな

   夕涼し 金魚あきなふ 金魚坂


志賀佳世子さんのプロフィール

昭和15年神戸市生まれ。
昭和37年神戸市外国語大学英米学科卒業。
昭和62年俳句結社「鷹」 に入会、藤田湘子に師事。
平成4年「鷹」同人。平成17年湘子逝去にともない、新主宰 小川軽舟に師事、現在に至る。
平成7年からNHK川越文化センターで、平成10年から 朝日カルチャーセンター立川で俳句講座講師。
俳人協会会員。著書に句集「尖塔」。

         

                      最後に本日の参加者が全員集合して記念撮影です。



                       とても楽しかったね!   


 また、来年も多くの同窓の皆さんとお会いできますよう。

          ― 文責: 世話人 吉岡潤子(学30EB) ―




                                         
                                       
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